小型化によって一気に普及したコンピュータですが、IT化が業務の効率化を進めるとあって、各企業が競ってシステムを導入する一方で、ITに関する知識は乏しく、当初IT投資はどんぶり勘定というのも珍しくありませんでした。そのため高価で高性能なシステムが導入されながら、使い勝手が悪かったり、ユーザーが利用価値をあまり認識していなかったりといった事情もあって、割高な買い物であったという面も見逃せません。しかし今や一人で数台のパソコンやモバイル端末を利用しているという人も増えており、それだけ費用対効果をシビアに見積もるクライアントが増えました。そこでより安くより手軽でより柔軟なシステムへの移行が進んでいます。
これまでの物理的なサーバを利用してシステムを構築するという方法では、サービス利用者が予想外に増えたり、提供するサービスを充実させたい場合にも、事後的にそれに対応することが難しく、あらかじめある程度余裕のある見積もりに基づいてインフラを構築しておく必要がありました。しかし例えば実際のところは利用されていないにもかかわらず、コストばかりが嵩むような結果に終わっているサーバもあるため、このサーバの台数を適正化するなどのリソースの有効活用が求められるようになったのです。また巨大なシステムを運用する上で、消費電力や保守・管理などの費用も決して馬鹿にならず、それらの低減も課題です。更にビジネスの変化のスピードが速まっており、柔軟に対応できるシステムへの期待が高まりました。
そこで注目されたのが、サーバの仮想化技術です。これは従来であれば物理的にサーバを複数台使用していたところを、一台のサーバを複数台のサーバと仮想することによって、分割して利用する技術です。個々の仮想サーバでは、OSやアプリを実行させることができるため、独立したコンピュータとしての利用が可能です。業務やビジネスが変化して新しいシステムの導入が必要な場合にも、仮想サーバを追加することで簡単に要求を実現することができるのであり、ハードウェアなどを新たに購入する必要がありません。
そしてこの仮想サーバは、アプリケーションごとや部門ごとに導入されたサーバが一般的にCPU使用率が低くて、その性能を上手く生かし切れていないという点を効率化するだけではありません。新しいOSには対応できない古いアプリケーションであっても、仮想化環境の構築により、最新のサーバで利用することができます。またハードウェアに障害が発生したり、地震などの災害によってメインサイトでの業務の継続が難しくなったような場合にも、速やかな復旧を可能にするのです。